2021年7月13日火曜日

2021.7.2 控訴審第2回期日 概要報告(報告集会の動画あり)

 2021年7月2日、マイナンバー違憲訴訟@神奈川の控訴審第2回期日が東京高裁で開かれました。当日はあいにくの梅雨空の中でしたが、控訴人ら55名が参集し、抽選券が配られました。

 午前11時に開廷。はじめに裁判長より、意見陳述に入る前に、今後の裁判の進行について協議したいとの発言があり、控訴人と被控訴人・国それぞれに対し、今後提出予定の準備書面について質問されました。控訴人からは、憲法論での補完主張やマイナンバー制度とデジタル改革関連法との関係における主張および立証等を提出すること(10月上旬まで)、被控訴人・国からは個人情報保護委員会の機能不全を指摘する控訴人の主張に対する求釈明、憲法41条違反を主張する控訴人意見書への反論文等を提出すること(8月上旬まで)が確認されました。

相次ぐ違法再委託 原因は番号制度の欠陥そのもの

 続いて控訴代理人の小林弁護士が、自治体や国税局等のマイナンバー利用事務を委託した業者が委託元の許可を得ずに再委託している実態が相次いで発覚した件(以下:違法再委託)について、情報公開請求による開示資料の分析をもと意見陳述しました。なお、違法再委託による漏洩は約225万4650人分に及びます。

 小林弁護士は、情報公開により▽自治体・行政機関等の業務委託元が委託先・再委託先に対し、「必要かつ適切な監督」を行っていない、▽委託元、委託先等の法令上の規制の理解が皆無、▽厳格な保管・管理等が要求される特定個人情報を扱えるだけの体制、人的資源、設備等が備わっていない―等の実態が明らかになったと指摘。マイナンバー制度を運用するための社会的基盤がなく、今後も大量漏洩は不可避だとした。

 また、この実態は制度上の欠陥そのものであり、「技術上または法制度上の不備があり、(中略)第三者に開示または公表される具体的な危険が生じていない」とした住基ネット最高裁判決を満たしていないと強調しました。

役所窓口は「マイナカード狂乱」

 次に、控訴人を代表して、住谷和典氏が意見陳述しました。住谷さんは、行政の効率化を謳ったマイナンバー制度だが、▽特別定額給付金の支給時に同カードの取得やパスワード変更で役所窓口に人が殺到、結果として郵送申請のほうが速やかに支給できたこと、▽マイナポイントという経済誘導により、同カード取得申請で役所内は今も“三密”状態であること―など、自治体事務の現場は「マイナンバーカード狂乱」とも言える混乱が生じ、職員が疲弊している実態を吐露しました。

 また、公務窓口は「申請・届出と相談は一体」だとし、申請者の声に丁寧に耳を傾け、職員が培ってきた知識や経験により、何が最も適切な施策なのかについて助言し、それによって住民のくらしを支えるのが国・自治体の役割だと主張。しかしマイナンバー関連の実務を強要され、それに振り回される職員、なによりも住民が不在の構図の中で、本来あるべき行政の姿が大きく歪められており、住民の信頼も低下する一方だと指摘しました。

 その上で、自己情報コントロール権さえ認めない国の下でのデジタル化等の推進は、個人情報保護、プライバシーの保障に重大な懸念を抱かざるを得ないとし、憲法や行政の本旨に反し、国民の権利を侵害する、マイナンバー制度の廃止を訴えました。

 閉廷後、参議院議員会館に移動し報告集会を開催。次回の第3回期日(10月20日)に向けて、証人申請が出来るように準備していくこと、控訴人の意見集約を進めていくこと等が確認されました。

 

意見書(PDF)

 
報告集会の模様(YouTube)

撮影・提供:JOURNAL ASIA