2021年3月16日火曜日

2021.3.8 東京高裁第一回期日 概要報告

現代社会でのプライバシー権を問う闘い

 2021年3月8日、原告179名からなる「マイナンバー(共通番号)違憲訴訟@神奈川」の控訴審・第1回期日が東京高等裁判所の101号法廷で開かれました。当初は昨年6月に開かれる予定でしたが、コロナ禍による中断もあり、1年半を経ての控訴審となりました。当日は原告、代理人ら58名が参集・傍聴しました。残念ながらマスコミは1社も来ませんでした。

 傍聴の前に入廷行動を実施。その後、傍聴は抽選に並びましたが、締め切りの時点でちょうど規定の45人だったので、抽選なしで傍聴券の配布がありました。

 午前11時に開廷。はじめに原告代理人2名が陳述しました。

 小賀坂弁護士は高度情報化の現代社会においてプライバシー権を「個人情報がみだりに開示・公表されない」との観点でのみ捉えた一審判決に対して、現実社会に即していない判決だと糾弾。「マイナンバーをインデックスとして様々な個人情報が紐づけられれば、極めてセンシティブな個人情報となる。これこそがマイナンバー制度であり、その本質と実態を直視し憲法適合性が判断されなければならない」と強調しました。

 次に、永田弁護士が憲法学説の通説である「自己情報コントロール権」を認めない一審判決に対して、社会の変化や学説の発展から目を背けるものだと指摘。EU一般データ保護規則(GDPR)をはじめ、国際的には自己決定と本人同意が前提だとし、現代社会のプライバシー権のあり方を示すことが司法の責務だと訴えました。


患者情報の漏洩「医師として耐え難い」

「国民総背番号制」への変質を危惧

 続いて原告代表2名が意見陳述を行いました。

 藤田倫成さん(小児科)は開業保険医の立場から、この3月末から始まるマイナンバーカードの保険証利用(オンライン資格確認)に対して、同カードによって間接的にマイナンバーが持ち込まれることによる医療機関のリスクや不安を指摘しました。また、この流れで医療情報がなし崩し的にマイナンバーに紐づく懸念などを示唆し、「もしも病名や病歴が漏洩・流出して患者さんの社会生活に多大な被害が及ぶことは、医師として耐えがたい」と訴えました。

 最後に原告代表の宮崎俊郎さんが、政府のデジタル政策は本人同意軽視したままマイナンバー制度の領域を無限大に広げ、デジタル庁で一括管理する構想だと指摘。我々が危惧してきた「国民総背番号制」だとし、プライバシーを危険にさらすマイナンバー制度の廃止を求めました。

 国からの反論陳述はなく、今後の進行等を協議。次回期日は7月2日に開くことを確認しました。最後に裁判長が「資料を配布していて注意を受けたそうだが、裁判所は静謐(せいひつ)な環境で審議を進めていきたい。そういった行為は静謐な環境を妨げるのでやめるように」との注意がありました。これに対し、小賀坂弁護士は「チラシなどを配布していたわけではなく、傍聴に外れた原告の方々に陳述書面を配っていただけ。裁判の進行を妨げるものではなく、それも出来ないといわれるのは違うのではないか」と反論しました。しかし裁判長は「あくまで裁判所としての考えを申し上げた」とし、平行線のまま終わりました。

 その後、弁護士会館に移動し報告集会を開催。集会では、福岡訴訟で意見書を書かれた福岡大学法学部教授の實原隆志さんが福岡から傍聴に来てくださり、今後の争点や福岡訴訟の状況などをお話しいただきました。また東京訴訟の弁護団から、控訴審第1回期日が5月31日に決まったことなどの報告もありました(報告集会の様子はYouTube動画をご覧ください)。


入廷行動の様子


報告集会の様子