2019年7月26日金曜日

第12回期日(2019.6.20)の概要報告

結審が宣言 判決は9/26(木)
 国に対してマイナンバー制度のプライバシー侵害等を訴える「マイナンバー(共通番号)違憲訴訟@神奈川」の第12回期日が6月20日、横浜地裁・101号法廷で行われ、結審が宣言されました。全国8地裁で係争中の同訴訟のうち、結審したのは神奈川訴訟が初めて。判決は9月26日(木)に言い渡されることとなりました。この件については、東京新聞、神奈川新聞、産経新聞などが報じています。

原告2名が最後の陳述 「マイナンバー制度への抵抗感強い」
 この日は原告・傍聴者など93名が参集しました。
 口頭弁論では、はじめに原告本人2名が意見陳述しました。税理士の益子良一さんは、SSN(ソーシャル・セキュリティ・ナンバー:社会保障番号)による「なりすまし被害」が頻発し、社会問題化しているアメリカの実態を例に、日本も同じ状況になる危険があると警鐘を鳴らしました。また、国税庁が今年の確定申告から電子申告(e-Tax)でID・パスワード方式を導入し、マイナンバーカードを不要としたことで、e-Taxでの申告が大幅に増加したことを紹介。同カードの利便性の無さ、ひいてはマイナンバー制度への抵抗感の強さの証左だと強調しました。労働組合の役員で元・労働局職員の住谷和典さんは、マイナンバーの厳格かつ煩雑な取り扱いによりハローワーク内で混乱が生じている実態を提示。制度目的の業務効率化に反するばかりが、現場では漏洩リスクや処罰への不安が増大していると訴えました。
 続いて原告代理人の小林弁護士が陳述。国税局や地方自治体の入力業務の委託業者が無断で再委託した件について、当該自治体に情報公開したところ、▽少なくとも230万人分のマイナンバーが漏洩、▽一部が海外で処理されていること、▽この重大問題に対し個人情報保護委員会が何らの対応策を打ち出していないこと―等が明らかになったと報告しました。その上で小林さんは、制度構造上の問題、漏洩の具体的危険は認めざるを得ないと強調しました。

どこを切り取っても制度の違憲性は明白 弁護団が熱弁
 次に、最終準備書面をもとに、4名の原告代理人が制度の問題や違憲性について総括的に陳述しました。
 小笠原弁護士は、情報化社会の中でプライバシーをどう考えるか、が問われている裁判だと指摘。司法が「自己情報コントロール権」の存在を明確に示すことが必要不可欠だと主張しました。
 竹本弁護士は制度目的の欠如を主張。民主党政権が提案した「給付付き税額控除」など、公正な給付と負担の確保を達成する施策の運用基盤であったはずが、自民党政権によってこれら施策が見送りに。国民のプライバシー介入を正当化するだけの目的論が何ら存在しないと強調しました。
 鈴木弁護士は制度のシステム上の不備について陳述。相次ぐ漏洩事故、個人情報保護委員会の機能不全など、安全管理措置が何ら機能しておらず、制度的な欠陥は明白だと主張しました。
 前述の三者の主張を踏まえ、小賀坂弁護士は住基ネット最高裁判決における違憲審査の方法にしたがって判断しても、マイナンバー制度の違憲性は明白だと強調しました。
 被告・国からの反対弁論はなく、裁判長より結審が宣言され、閉廷しました。終了後には報告集会が開催。裁判の報告の他、判決までの取り組みや、高裁を見据えた今後の展開等について意見交換がなされました。

報告集会(動画) 提供:JOURNAL ASIA


写真は報告集会の様子です